極上のコーヒーはウンコより生まれり

【Nature】この度、カナダの研究者が行った研究によると、インドネシアにて動物の肛門から生みだされる極上のコーヒー、コピ・ルワの味わいの秘密を明らかにしたとのこと。このコピ・ルワはジャコウネコ科の動物、パームシベット(学名Paradoxurushermaphroditus・写真)が一度コーヒー豆を食べた後にウンコとして排出する豆をコーヒー豆として利用するもので、現在アメリカドルで1kg約$1000(日本円で11万円程度)で取引されている非常に高価なコーヒーである。

またこうした生産方法からその供給は常にか細く、近年はインドネシアの政治的混乱のあおりも受け、現在では年間たったの230kgしか生産されていない希少なコーヒーなのである。

そしてこの度、カナダはオンタリオ、グエルフ大学教授のマッシモ・マルコーン氏はこの高級豆が果たして複製可能かどうかを調べる為、パームシベットとコーヒーが共に存在する地域を世界中に探し、エチオピアに辿り着いたと話している。

「(エチオピアは)まさに私が思い描いていた場所でしたね。コーヒー豆とジャコウネコ、あそこ以外にこの二つの条件を兼ね備えた場所はないでしょう。」

その後マルコーン氏はエチオピアを訪れ、現地で同類のアフリカジャコウネコ(学名:Civettictis civetta)のウンコからコーヒー豆を抽出、実際にコーヒーを煎れて、コピ・ルワと比較したのである。

分析の結果、双方のコーヒー共に、ジャコウネコの消化活動がコーヒー豆のタンパク質をより小さな物質に分解し、それがコーヒーの味わいをより深く、更にその香りを豊かにしていることを発見、また一部のタンパク質は完全に分解され、それがコーヒーに更なる苦味を与えていることが明らかになったという。

そして両者の比較の結果、インドネシアのパームシベットの消化器系はアフリカジャコウネコよりも、より活発にタンパク質を完全分解することが明らかになり、従って同じ方法でのコピ・ルワの複製は難しい、という結論に至ったとしている。

しかしマルコーン氏は更に、ジャコウネコの腸の中のバクテリア酵素、そして乳酸菌がコーヒーを発酵させるのに用いられる"ウェット・プロセス"と呼ばれる方法と非常に良く似た働きをしていることを突き止め、そうした結果から同系統の乳酸菌を用いてウェット・プロセスを調整して行うことで、おそらく限りなくジャコウネコの生み出すコーヒーに近いコーヒー豆を作り出すことが可能であると確信したという。

しかしまた、マルコーン氏は果たしてそうした実験を行う価値があるかどうか、それは分からないと話している。「もしも同じものをそういう方法で作ったら、おそらく世界で最も希少で、高価、といったこのコピ・ルワの宣伝価値はなくなってしまうでしょう。」

そしてまた、専門家をして「土臭く、カビ臭く、甘く、滑らかで、豊か。ジャングルとチョコレートの味わい」などと評される、そのコピ・ルワも、究極的には、その希少的価値こそが全てであると結論している。

「コピ・ルワは、決してどのコーヒーとも似ていない、しかし、そのどれよりも良いという訳でもない、そんなコーヒーだと思います。」マルコーン氏は語った。