聞くだけで彼女ができる?「奇跡の着うた」の謎

それでは、着うたがどうやって視聴者に“影響”をもたらすのか。苫米地氏の話を聞く限り、原理としては「脳波を同調させる」こと、それに「サブリミナル効果」を用いるようだ。「プラシーボ効果」も利用するという。耳慣れない言葉にとまどうユーザーもいるかもしれない。

 順番にいこう。苫米地氏は、「人間の脳波は、外部の刺激に応じてバイオフィードバックにより同調を起こす」と説明する。

 「たとえば、左耳に440Hzの音を聞かせ、右耳に448Hzの音を聞かせる。そうすると、その差分である“8Hz”のうねりが生じる。この8Hzに、脳波が誘導される」

 人間の脳波にはいくつかの種類がある。眠くなったときに表れるシータ波、精神活動していることを表すβ波などがあるが(2003年11月13日の記事参照)、このうちリラックスしているときに表れるといわれるα波は、8Hz〜13Hz未満の周波数を持っている。前述の方法により脳波を8Hzに誘導すると、α波が出ている――すなわち、リラックスした状態になるという。

 「もちろん、α波だけを出すというのではない。脳内では全周波数帯が出ているが、α波が強い、『α波優位』の状態にする」

恋人ができるメカニズムは?
 記憶力がよくなったり、巨乳になったりするメカニズムは分かった。しかし、聞くだけで恋人ができる音源は、さすがに無理ではないのか。

 苫米地氏は、女性向け「彼氏ができる」着うたを例にとって、2つの効果を狙っていると解説する。1つは、積極性を高めること。もう1つは、相手に自分を「魅力がありながらそれを抑えている」と認識させることだという。

 前者は、比較的分かりやすい。苫米地氏は「動物行動学的に見ても、メスがオスにボディタッチする(ここでは、スキンシップと言い換えてもいいだろう)ことが生殖行為のきっかけになる」と解説する。動物の場合は特に、発情期があるので「自分は準備が整っている」ことを相手に知らせる必要がある。人間にしても、アプローチを起こさないことには恋愛は始まらないだろう。

 後者はどうか。苫米地氏は、いわゆる“いい女”の特徴は「淑女でありながら――同時に性的魅力をかもしだしていること」だと解説する。

 極度に「お堅い」イメージは逆効果。かといって、あまりに遊び好きなイメージも問題だ。これをどう両立させるかが問題だと同氏。

 彼氏ができる着うたでは、男性が聞くと目の前の女性が「ああ、淑女でありながら性的魅力が抜群だ」と感じられるよう誘導する音源が入っている。つまり、女性側は自分で聞きつつ、スキを見て意中の男性に「着うたを聞かせる」必要があるわけだ。用意周到な計画が、求められるといえそうだ。